ストーリー


ある日ナナツカマツカの丘にやってきた猫のヨゴロウザは、記憶喪失で自分の名前以外は何も思い出せない。
折しも、ナナツカマツカに住む野良猫たちと、アカゲラフセゴを縄張りにする野良犬たちとの間で食糧をめぐる問題が持ち上がる。
季節は春。秋までは持ちこたえるだろうが、今度の冬ばかりはもはや食糧争いは避けられない。 単独行動の猫たちが、集団行動をとる犬たちに果たして勝つことができるのか。 ヨゴロウザは、自分が何者なのか確かめる術もないまま、命懸けの戦いに乗り出していく……。

☆ナナツカマツカ
カマツカ市の東のはずれ、子文字山連峰のすぐ手前に横たわる標高一二四メートル、およそ四○○メートル四方の広がりを持つなだらかな丘。
七本のカマツカの花が咲く丘、が地名の由来。カマツカ(鎌柄)とは、バラ科カマツカ属の落葉低木。 木材が粘り強く鎌の柄に利用されたことからこの名がある。また牛の鼻 輪もこの木で作ったことから別名でウシコロシ、ウシノハナギとも。春に白くて小さい花をつけ、秋に赤い実を結ぶ。
現在ナナツカマツカにはカマツカの林が存在し、春には無数のカマツカの花が咲く。
もともとの七本のカマツカがあったとされる場所には神々が宿るとの云われがあり、今は小さな社が建ち並んでいる。ふもとに近い方から、長ヒゲ様、くすねヒゲ様、まよいヒゲ様、青ヒゲ様、赤ヒゲ様、白ヒゲ様、黒ヒゲ様。今でも「ヒゲ様もうで」という言葉が残っており、カマツカ市の老人がお供え物をしに来ることがある。

☆フタツハチブセ
ナナツカマツカの東に位置する丘。二つの鉢を伏せたような形からついた地名。「人くらい夜叉堂」という建物があり、野ねずみたちの住み処となっている。

☆アカゲラフセゴ
アカゲラ (赤啄木鳥)はキツツキ目キツツキ科アカゲラ属に分類されるキツツキの種類。アカゲラが棲む、伏せ籠のような形の丘、が地名の由来。
アカゲラフセゴは人間たちの墓が建ち並ぶ墓地だが、暗い印象はなく明るく開けた場所である。
野良犬たちが二つの集団に分かれて暮らしており、三重の塔付近にはハリガネが率いる一団が、十戒唱名寺という無人の寺付近にはタレミミが率いるもう一団がいる。


『ひげよ、さらば』

原作/上野瞭 (理論社刊)
1977年〜1980年の3年にわたって福音館書店の「子どもの館」に連載された原稿用紙1500枚に及ぶ長編児童小説。
1983年度日本児童文学者協会賞受賞作。 1984年4月から1985年3月の1年間、NHK総合にて『ひげよさらば』のタイトルで全213話の連続人形劇としても放映され話題を呼んだ。


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